特定活動インターンシップで外国人を採用する完全ガイド【2026年最新版】手続き・要件・本採用まで徹底解説


はじめに

「インターンシップで優秀な外国人学生を見つけたのに、ビザの手続きが複雑すぎて諦めた」——人事担当者からそんな話を聞くことが増えています。

実際、外国人インターンの受け入れにはいくつかのステップがあり、知らないまま進めると「それは在留資格の範囲外の活動です」と入管庁から指摘を受けるケースもあります。しかし手続き自体は、正しく理解すれば確実に進められます。

2026年現在、日本企業が外国人を採用しようとすると、即戦力になる人材を見つけるのが難しいという現実があります。そこで注目されているのが「特定活動インターンシップ」を活用した採用戦略です。海外の大学に在籍する優秀な学生を一定期間受け入れ、自社に合う人材かどうかを見極めてから本採用する——このルートを知っているかどうかで、グローバル採用の選択肢は大きく変わります。

この記事では、特定活動インターンシップの制度概要から企業側の手続き・必要書類・受け入れ体制・本採用への切り替えまで、実務担当者が必要な情報をすべてまとめています。


第1章:そもそも「特定活動インターンシップ」とは

在留資格「特定活動」の中の一種類

「特定活動(とくていかつどう)」とは、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動を行うための在留資格です。特定活動には50種類以上の号(ごう)があり、インターンシップはそのうちの告示9号にあたります。

法律上の正式名称は「在留資格・特定活動(告示9号:インターンシップ)」で、一般的には「インターンシップビザ」「特定活動9号」とも呼ばれます。

特定活動9号で認められる活動の定義

法務省告示によると、特定活動9号の対象となるインターンシップは以下のように定義されています。

「外国の大学の学生が、その大学と日本の公私の機関との契約に基づき、当該機関の事業所において当該大学における専攻科目と関連する業務に従事すること」

噛み砕くと、次の条件をすべて満たす必要があります。

条件内容
対象者海外の大学に在籍する学生(卒業生・既卒者は対象外)
契約の有無海外大学と日本の受入企業との正式な契約が必要
業務内容学生の専攻科目と関連する業務であること
教育課程大学の教育課程の一部として、単位が付与されること
報酬受入企業から報酬を受けること
期間1年を超えないかつ修業年限の2分の1を超えない期間

「報酬なし」のインターンシップとの違い

報酬の有無によって、適用される在留資格が変わります。

パターン在留資格条件
報酬あり・1年以内特定活動9号(インターンシップ)単位付与・大学との契約・専攻関連
報酬なし・90日超文化活動ビザ日本の文化や技術を習得する活動
報酬なし・90日以内短期滞在ビザ最も手続きが簡単だが制限多い
日本在住の留学生・報酬なし資格外活動許可不要無報酬なら追加手続き不要

特定活動9号が適用されるのは、あくまで「海外大学に在籍中」「報酬あり」「単位付与あり」の3条件がそろった場合です。この点を最初に確認しておくことが重要です。

日本国内の留学生とは別の制度

よく混同されるのが、日本国内の大学に在籍している外国人留学生のインターンシップです。日本に「留学」ビザで在留している学生が日本企業でインターンする場合、報酬なしであれば追加の資格外活動許可は不要です。報酬ありの場合は、週28時間以内の「資格外活動許可」の範囲内であれば問題ありません。

特定活動9号は、これとは別に海外から招へいするケースに使います。


第2章:特定活動インターンシップを活用するメリット

メリット① 本採用前にミスマッチを防げる

採用した後に「こんなはずじゃなかった」と感じるのは、企業側にとっても外国人材にとっても不幸なことです。インターンシップを通じて、実際に働く姿を見たうえで本採用を判断できるのは大きなメリットです。

特に外国人採用の場合は、文化的な背景や業務スタイルの違いもあります。インターンシップ期間中に「この人と一緒に長く働けるか」を見極めてから採用できるのは、採用リスクの低減につながります。

メリット② 海外の優秀な大学生に直接アプローチできる

特定活動9号は「海外大学の在籍学生」が対象です。つまり、アジア・欧米の有力大学に通っている学生を日本に招へいして、自社で働いてもらうことができます。

日本での就職機会をまだ知らない海外の学生も多く、インターンシップを通じてそこに直接リーチできるルートとして活用している企業も増えています。

メリット③ 即戦力化への準備期間として使える

本採用前に自社の業務・社内文化・日本語でのビジネスコミュニケーションに慣れてもらえます。入社後の立ち上がり期間が短くなり、早期の戦力化につながります。


第3章:受け入れ企業に求められる要件

特定活動9号でインターン生を受け入れるには、企業側にも満たすべき条件があります。ここを準備できていないと、在留資格認定証明書の申請が通りません。

要件① インターンシップ責任者の選任

インターンシップ全体を統括管理する「インターンシップ責任者」を選任する必要があります。

項目要件
雇用形態常勤の役員または正社員
経験年数原則として5年以上の業務経験
役割受け入れ・指導体制の管理、大学との連絡窓口

要件② インターンシップ指導員の選任

インターンシップ生に実務指導を行う「インターンシップ指導員」も別途選任が必要です。

項目要件
雇用形態常勤の正社員
経験年数原則として3年以上の業務経験
役割日常的な実務指導・評価・報告書作成

責任者と指導員は同一人物でも構いません。ただし、両方の要件を満たしている必要があります。

要件③ 法令遵守の実績

受け入れ企業の役員・責任者・指導員が、過去5年以内に出入国関連または労働関連の法令に違反していないことが求められます。

要件④ 実地調査への協力

入管庁から実地調査の依頼があった場合は、協力する義務があります。インターン生の就業実態・指導体制・生活状況について確認が入ることがあります。

要件⑤ 実施計画書の作成と保存

インターンシップ実施前に「実施計画書」を作成し、終了後は「評価報告書」を作成します。終了後最低3年間の保存義務があります。


第4章:特定活動9号の申請に必要な書類

海外から学生を招へいする場合は、企業が代わりに「在留資格認定証明書(COE:Certificate of Eligibility)」を入管庁に申請します。

企業側が準備する主な書類

書類名備考
在留資格認定証明書交付申請書入管庁の書式(ウェブサイトからダウンロード可)
海外大学と自社との間のインターンシップ契約書(写し)大学名・期間・業務内容・報酬条件を明記
インターンシップ実施計画書業務内容・指導体制・目標・評価方法を記載
申請人の活動内容・期間・報酬等の待遇を記載した資料雇用契約書や業務委託契約書に相当
受け入れ機関の概要説明資料会社案内・登記事項証明書
インターンシップ責任者・指導員の証明書類雇用期間・業務経歴を証明するもの

学生本人が準備する主な書類

書類名備考
在学証明書在籍中の大学が発行
大学からのインターンシップ承認書・推薦状教育課程の一部であることの証明
単位取得等を証明する資料インターンシップ実施計画(大学が発行)
大学の修業年限を証明する資料在籍期間が「修業年限の2分の1以内」であることを示すため
過去の在日インターン歴がある場合はその資料複数回受け入れる場合に必要
顔写真(縦4cm×横3cm)1枚6ヶ月以内に撮影したもの

申請から許可までの目安

フェーズ期間目安
書類収集・準備1〜2ヶ月
入管庁への申請・審査1〜3ヶ月(初回は長め)
COE発行後、学生が本国でビザ申請2〜4週間
入国・業務開始即日〜1週間
合計3〜6ヶ月

初めて申請する場合は2〜3ヶ月かかるケースが多く、2人目以降は審査が早くなる傾向があります。夏季インターンシップを4月に開始したい場合は、前年10月〜11月には動き始める必要があります。


第5章:採用プロセスの全体フロー

実際の採用がどういう流れで進むのかを、ステップ別に整理します。

ステップ1:海外大学との協定・契約締結

特定活動9号の最大の特徴は、「海外の大学と日本の企業との契約」が必須であるという点です。個別の学生と直接契約するのではなく、大学と企業間の協定が先に必要です。

実務上のポイント:

  • 国内の大学・専門学校のキャリアセンターに連絡して、海外協定校を紹介してもらう方法が現実的です
  • 自社製品・サービスに関係する国の大学(例:ベトナム語話者が欲しければハノイ工科大学、IT人材ならインド工科大学系など)に直接アプローチする企業もあります
  • 経済産業省の「国際化促進インターンシップ事業」に参加すれば、大学との個別交渉なしにマッチングしてもらえます

ステップ2:学生の選定・選考

選考方法特徴
オンライン面接場所を問わず実施可能。日本語・英語どちらでも対応
書類選考専攻・成績・志望動機を事前確認
課題提出(スキルテスト)エンジニアなどはコーディング課題が有効
大学経由の推薦大学が優秀な学生を推薦するケースも多い

ステップ3:在留資格認定証明書(COE)の申請

選考が終わり採用予定者が決まったら、受け入れ企業が入管庁に在留資格認定証明書を申請します。申請は行政書士への代理依頼が可能です(初回は代理依頼を強く推奨します)。

ステップ4:学生が本国でビザを申請・取得

COEが発行されたら、学生本人の国の日本大使館・領事館でビザ申請を行います。COEを提示してビザを取得し、入国します。

ステップ5:インターンシップ実施

入国後、実施計画書に基づいてインターンシップを進めます。毎月の業務記録・指導記録を残しておきましょう。これが終了後の評価報告書の根拠になります。

ステップ6:評価報告書の作成・保存

インターンシップ終了後、指導員が「評価報告書」を作成します。評価内容は大学にも共有します(大学の単位認定に使われます)。この書類は3年間保存が義務です。


第6章:専攻と業務内容の「関連性」をどう示すか

特定活動9号で審査が通らない最多の理由は「大学の専攻と業務内容の関連性が不十分」です。ここを押さえておくと申請の通過率が大きく変わります。

関連性が認められやすい組み合わせの例

大学の専攻受け入れ可能な業務内容例
コンピュータサイエンス・情報工学Webシステム開発・データ分析・AI研究
経営学・ビジネス経営企画・マーケティング・事業分析
ホテル・観光学ホテルフロント・観光PR・インバウンド対応
国際関係・外国語通訳・翻訳・海外営業サポート
機械・電気工学製品設計・品質管理・製造ライン改善
農学・環境科学農業技術研究・環境調査・品質管理
建築・土木建設現場管理・CAD設計・施工監理

関連性を示すコツ

実施計画書での記載方法は、単に「営業補助業務」ではなく、「経営学専攻で習得した市場分析手法を活用した日本市場調査業務」のように、専攻と業務がどう結びつくかを文章で説明します。

また、大学の授業シラバス(シラバスとは各授業の目標・内容を記した資料のことです)や成績証明書と照らし合わせて、受け入れ業務との関連を具体的に示すと審査通過率が高まります。


第7章:インターンシップから本採用への流れ

特定活動9号はあくまで「大学在学中」が前提です。学生が卒業した後は、特定活動9号のまま働き続けることはできません。

就職までの流れ:
インターン終了(学生が帰国) → 本採用内定 → 学校卒業見込み・卒業 → 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格認定証明書を申請 → ビザ取得・来日 → 入社


第8章:受け入れ体制の整備——実務で役立つポイント

入国前にやること

準備項目内容
住居の手配社員寮・マンスリーマンションの用意、または不動産仲介の紹介
銀行口座開設サポート来日直後は口座が作りにくい。案内資料を事前に用意する
携帯電話プランの案内外国人でも契約しやすいMVNO(仮想移動体通信事業者)を紹介する
オリエンテーション資料日本の生活ルール・会社のルール・緊急時の連絡先をまとめる

入国後〜インターン期間中にやること

項目目安タイミング
市区町村への住民登録案内来日後14日以内(本人の義務)
社会保険加入手続き雇用開始日に速やかに
定期面談(1on1)最低月1回。孤立防止と業務進捗の確認
業務記録の管理評価報告書の作成に使うため毎月記録

第9章:よくある失敗と対策

失敗① 「大学との契約なし」で受け入れようとした

対策:学生を決める前に、まず大学との協定書・契約書の締結を先行させます。大学との交渉には1〜3ヶ月かかる場合があるため、スケジュールに余裕を持って進めます。

失敗② 専攻と業務内容の関連性が薄かった

対策:実施計画書に「専攻の〇〇で学んだ△△の知識を活用して、□□業務に従事する」と具体的に書きます。

失敗③ 在留期間中に卒業してしまった

対策:受け入れ開始前に卒業予定時期を確認し、「卒業前にインターンが終わるか」を必ず確認します。インターン終了日が卒業式より後にならないよう計画します。

失敗④ 行政書士なしで書類を準備して不備が発生

対策:初回は行政書士への依頼を強く推奨します。費用は事務所によって異なりますが、申請代行料金の目安は数万円〜十数万円程度です(※実際の費用は行政書士事務所にお問い合わせください)。2回目以降は社内でも対応できるようになる企業が多いです。

失敗⑤ 評価報告書を作っていなかった

対策:インターン終了後2週間以内に作成・保存するルールをあらかじめ決めておきます。


第10章:特定活動インターンシップを活かした採用戦略の設計

長期的な採用パイプラインとして設計する

フェーズタイムライン例(4月入社を目標の場合)
大学との協定締結前々年10月〜3月
候補者選考・内定前年4月〜5月
COE申請(企業)前年6月〜7月
COE発行・ビザ取得(学生)前年8月〜9月
インターンシップ実施前年10月〜3月(6ヶ月)
本採用・技人国ビザへ変更当年1月〜3月
入社当年4月

大学の選定で戦略を変える

目的推奨する大学との協定先
ITエンジニアを採用したいインド(IIT系)・中国(清華大学系)・ベトナム(ハノイ工科大学等)
多言語対応・通訳翻訳人材中国・台湾・韓国・ベトナム・タイの外国語大学
観光・ホテル業向け人材東南アジア(マレーシア・フィリピン・タイ)の観光系大学
製造業・機械系東欧・中国・韓国の工学系大学

まとめ

特定活動インターンシップ(告示9号)は、海外の大学に在籍する優秀な学生を日本企業で受け入れるための制度です。手続きは複雑に見えますが、「大学との契約」「専攻と業務の関連性」「責任者・指導員の選任」「実施計画書の作成」の4点を押さえれば、確実に進められます。

今すぐ確認すべき3つのこと

  1. 大学との協定があるか——なければ、協定締結から始める必要があります。経済産業省の「国際化促進インターンシップ事業」を活用すると交渉不要でマッチングしてもらえます
  2. インターンシップ責任者・指導員を誰が担うか——人事担当者だけでなく、現場のマネージャーと合意を取っておくことが大切です
  3. 本採用のルート(技人国ビザでの採用)を先に設計しているか——インターン終了後の在留資格変更まで含めたスケジュールを最初から描いておくと、スムーズに進みます
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