─── 第5章:採用後にやるべき手続き ───
無事に採用が決まったら、入社前後に企業側がやるべき手続きがある。見落とすと罰則があるものもあるので注意が必要だ。
手続き① ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」(義務)
全ての事業主に義務付けられている届出で、外国人を雇い入れたとき・離職させたときに毎回ハローワークへ報告しなければならない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 届出タイミング | 雇い入れ・離職のたびに |
| 届出方法 | ハローワーク窓口・インターネット(外国人雇用状況届出システム)・雇用保険手続きと同時に行うことも可 |
| 罰則 | 届出を怠った場合、30万円以下の罰金 |
手続き方法は厚生労働省の「外国人雇用状況届出システム」(hellowork.mhlw.go.jp)からオンラインで行える。
手続き② 雇用保険・社会保険への加入
外国人も日本人と同じく、雇用保険・社会保険・労災保険の加入対象となる(一部の在留資格や雇用形態を除く)。
「外国人だから加入しなくていい」は誤りだ。会社が義務を怠ると是正指導を受ける。
| 保険の種類 | 加入条件 | 手続き先 |
|---|---|---|
| 雇用保険 | 週20時間以上・31日以上雇用 | ハローワーク |
| 健康保険・厚生年金 | 週30時間以上・2ヶ月超えて雇用 | 年金事務所 |
| 労災保険 | 全員対象(パート・アルバイト含む) | 労働基準監督署 |
手続き③ 在留カードのコピーと保管
採用時に在留カードを確認してコピーを保管しておく。これは義務ではないが、後から「在留資格を確認していたか」と問われたときに証拠になる。
在留期限のリマインダーも設定しておこう。期限が近づいたら本人に更新手続きの案内をする。在留期限切れのまま働かせると、会社側も法的リスクを負う。
手続き④ 就業規則・契約書の整備
外国人だからといって待遇を下げることは違法だ。日本の労働基準法(ろうどうきじゅんほう)は国籍を問わず全員に適用される。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 賃金 | 日本人と同等の賃金・最低賃金以上 |
| 労働時間 | 1日8時間・週40時間以内が原則 |
| 雇用契約書 | 日本語と本人の母国語の両方で作成するのが望ましい |
| 就業規則 | 外国語翻訳版を用意すると定着率が上がる |
─── 第6章:「技人国」ビザで採用する手順(最もよく使われるルート) ───
「技術・人文知識・国際業務」は外国人採用で一番使われる在留資格だ。具体的にどう手続きするかを、国内在住の外国人を採用するケースで説明する。
ステップ1:採用したい外国人の在留資格・状況を確認する
- 現在の在留資格は何か
- 在留期限はいつか
- 採用予定の職種は技人国の範囲に入るか
技人国の「技術」分野はITエンジニア・機械設計など、「人文知識」は会計・法務・マーケティングなど、「国際業務」は通訳・翻訳・語学講師など。現場仕事(工場の製造ライン・飲食店のホールなど)はこの在留資格の対象外なので注意。
ステップ2:必要書類を揃える
企業側が用意するのは主に以下の書類だ。
企業が準備する書類(例):
| 書類名 | 説明 |
|---|---|
| 雇用契約書(または内定通知書) | 採用条件・業務内容を明記 |
| 会社の登記事項証明書 | 法務局で取得 |
| 会社の決算書(直近1〜3期分) | 財務状況の確認 |
| 採用理由書 | 業務内容・外国人を採用する理由 |
| 会社案内・組織図 | 規模・業種の説明 |
| 申請書(入管庁の書式) | 入管庁ウェブサイトからダウンロード |
本人が準備する書類(例):
- パスポート・在留カード
- 卒業証明書・成績証明書(学歴が要件に関わるため)
- 職歴証明書(経歴が要件に関わる場合)
- 2026年4月以降の対象ケースでは日本語能力の証明書(JLPT N2等)
ステップ3:入管庁へ申請(本人が窓口または代理人が申請)
在留資格変更許可申請は、原則として本人が入管庁の窓口に行くか、申請取次資格を持つ行政書士に代理申請を依頼する。
申請書は入管庁のウェブサイト(www.moj.go.jp)からダウンロードできる。
ステップ4:審査を待つ
審査期間は通常1〜3ヶ月。在留期限が迫っている場合は「在留期間更新」と同時に申請する必要がある。
ステップ5:許可が下りたら入社
在留カードが新しいものに更新されて「技術・人文知識・国際業務」の記載があれば採用完了。入社後はハローワーク届出を忘れずに。
─── 第7章:外国人採用に使える主な求人媒体 ───
「どこに求人を出せばいいの?」という疑問もよく聞く。外国人向けの媒体を中心に、使い分けを整理した。
国内の外国人向け求人サイト
| 媒体名 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| Guidable Jobs | 身分系在留資格(永住・定住・配偶者)の外国人が多い | 就労制限なしの外国人を採用したい |
| WORK JAPAN | 30万人以上登録・8言語対応 | アルバイト〜正社員まで幅広く採用したい |
| 外国人求人ネットACE | 世界137ヵ国の登録者・17年以上の実績 | グローバル人材・専門職の採用 |
| マイナビグローバル | 大手就活サイト系・外国人留学生も多い | 新卒の外国人留学生を採用したい |
| Indeed(英語・多言語) | 世界最大規模・多言語求人可能 | コストを抑えて幅広くリーチしたい |
LinkedIn(リンクトイン)でのダイレクトリクルーティング
エンジニアや専門職の外国人を探す場合は、LinkedIn(ビジネス特化のSNS) を活用するのも有効だ。日本語・英語でスカウトメッセージを送ることができ、プロフィールで職歴・スキルを確認してからアプローチできる。
無料アカウントでも求人の掲示や候補者へのメッセージは可能だ。
ハローワークの外国人雇用サービスセンター(無料)
費用をかけたくない場合は、ハローワークの外国人雇用サービスセンターが活用できる。全国主要都市に設置されており、外国人求職者向けの紹介を行っている。求人票を日本語で出すだけで手続きは簡単だ。
大学・日本語学校との連携
新卒採用であれば、日本の大学や日本語学校のキャリアセンターに直接連絡して求人を出す方法もある。特に地方の中小企業では、地元の大学に通う外国人留学生が採用候補になりやすい。
─── 第8章:採用後の定着を高めるために ───
外国人を採用しても、すぐに辞めてしまっては採用コストが無駄になる。定着率を高めるために企業側ができることを整理する。
入社後3ヶ月が最も重要
外国人社員が離職を考えるのは入社後3ヶ月以内が最も多い。この時期に孤立感や不安を感じさせないことが大切だ。
定着率を上げる5つの施策
| 施策 | 具体的な方法 |
|---|---|
| メンター制度 | 先輩社員を1人担当者にして相談窓口にする |
| 多言語サポート | 就業規則・社内マニュアルを母国語で提供 |
| 在留手続きサポート | 在留期限更新の費用・時間を会社が支援 |
| 文化理解の場 | 宗教的な配慮(礼拝時間・食事制限)を尊重する |
| 日本語学習支援 | 会社費用負担で日本語学校に通わせる |
在留期限の管理は会社の責任
在留期限が切れたまま働かせていると、企業側も不法就労助長罪に問われるリスクがある。社員の在留期限をエクセルなどで一覧管理して、期限3ヶ月前には必ず本人に連絡する仕組みを作っておこう。
─── 第9章:よくある失敗と対策 ───
初めての外国人採用でよく起こるミスを事前に把握しておこう。
失敗① 在留資格と業務内容が一致していなかった
「この人は在留カードを持っているから大丈夫」と思ったら、許可されていない職種に就かせていた——というケースが多い。
対策: 在留資格の種類と採用予定の業務内容を照合し、不明な場合は入管庁または行政書士に事前確認する。
失敗② 在留期限が切れているのに気づかなかった
採用時は有効だった在留カードが、勤務中に期限切れになっていた。
対策: 在留期限をシステムや台帳で管理し、期限前に更新を促す。
失敗③ ハローワーク届出を忘れていた
「採用後の手続きは労務担当がやる」と思ったら、誰も届出をしていなかった。
対策: 採用フローに「ハローワーク届出」を入れて、チェックリスト化する。
失敗④ 日本語がほぼ話せない人を採用してコミュニケーション不全に
「英語ができる外国人なら大丈夫」と採用したが、社内は日本語しか使えなかった。
対策: 採用前に職場環境と必要な日本語レベルを明確にして、面接で実際の日本語コミュニケーション能力を確認する。
失敗⑤ 行政書士に依頼せず自社で申請して不備が続いた
書類不備で申請が却下され、入社時期が大幅に遅れた。
対策: 初回の申請は行政書士(費用目安:技人国変更申請で5〜15万円程度)に依頼する。2回目以降は社内でできるようになることが多い(※費用は事務所によって異なります。実際の費用は行政書士事務所にお問い合わせください)。
─── 第10章:今日から始める外国人採用の実践ガイド ───
初めての外国人採用「最初の7ステップ」
| ステップ | やること | 目安時間 |
|---|---|---|
| ①情報整理 | 「どんな職種で・どんな在留資格の人を採用したいか」を決める | 1〜2時間 |
| ②相談 | 行政書士や採用支援会社に相談してコストと流れを把握 | 1〜2時間 |
| ③求人作成 | 職種・業務内容・在留資格の要件を明記した求人票を作成 | 半日 |
| ④媒体選定 | Guidable・WORK JAPAN・ハローワークのどれかに掲載 | 1〜2時間 |
| ⑤面接実施 | 在留資格・在留期限・業務適合性を確認しながら面接 | 随時 |
| ⑥書類準備 | 採用後、必要書類を揃えて在留資格変更申請または届出 | 1〜2週間 |
| ⑦入社後フォロー | ハローワーク届出・雇用保険加入・メンター配置 | 入社当日〜1週間 |
よくある不安への回答
「小さな会社でも外国人を雇えますか?」
雇える。むしろ、身分系(永住者・定住者)の外国人なら日本人採用と変わらない手続きで採用できる。
「日本語が話せない外国人でも雇えますか?」
在留資格の要件的にはNGではないが、職場環境次第で定着率が下がる。採用前に必要な日本語レベルを決めて、そのレベルで評価することが大事。
「技人国の申請は自社でできますか?」
できるが、初回は行政書士への依頼を推奨する。申請書類の書き方ひとつで審査結果が変わることもある。
「違法になる可能性はありますか?」
在留資格の範囲外の仕事をさせた場合は違法(不法就労助長罪)になり、企業も罰せられる。しかし正しい確認と手続きをすれば、複雑に見えても合法的に採用できる。
─── まとめ ───
2026年時点での外国人採用は、制度の整備が進んで以前よりかなりやりやすくなっている。一方で、「技人国への日本語要件追加」「特定技能の定期届出変更」など、押さえておくべき新しいルールも増えた。
外国人採用は「難しい・複雑・怖い」というイメージが先行しがちだが、正しい知識を持って一歩ずつ進めれば、必ずできる。まずは小さく始めてみよう。
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