─── はじめに ───
「先月、留学生のアルバイトを面接して採用したんですが……週に何時間まで働かせていいんでしたっけ?」
飲食店を数店舗経営している知人から、採用後に慌てた様子でこんな連絡が来た。在留資格ごとに就労できる時間や業務の種類が全く違うのに、それを確認しないまま採用してしまうケースが本当に多い。
「外国人を雇うときは在留カードを確認する」という認識は広まってきたが、「その在留資格でどこまで働かせていいか」まで理解している採用担当者はまだ少ない。実はここが外国人雇用の最大のリスクポイントだ。
在留資格を超えた業務・時間で働かせると、雇用した企業も罰則の対象になる。しかも2025年6月の法改正で不法就労助長罪の罰則が強化され、最大「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に引き上げられた。「知らなかった」では済まされない時代になっている。
この記事では、主要な在留資格を一つずつ取り上げ、就労可能な時間・業務範囲・注意点を実務的に解説する。採用担当者が手元に置いてすぐ確認できるよう、チェック表形式でまとめた。
─── 第1章:「就労制限」の仕組みを5分で理解する ───
在留資格は「日本で何をしていいかの許可証」
外国人が日本に滞在するときは必ず在留資格が必要で、在留資格の種類によって「就労できる時間」「就労できる業務の種類」が決まる。
就労可否で大きく3種類に分かれる。
| 分類 | 内容 | 代表的な在留資格 |
|---|---|---|
| 就労制限なし | 時間・業務の制限なし | 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者 |
| 就労に制限あり | 特定の業務・分野のみ就労可能 | 技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能実習、介護など |
| 原則就労不可(資格外活動許可で一部可) | 本来の在留目的が就労以外。許可を得れば週28時間まで可 | 留学、家族滞在 |
「資格外活動許可」とは何か
「資格外活動許可(しかくがいかつどうきょか)」とは、本来の在留資格の活動以外の活動(=就労)を認める特別な許可のことだ。留学や家族滞在のように「原則就労不可」の在留資格を持つ人が、アルバイト等をするために取得するもの。
重要な点が2つある:
- 許可を取っていても週28時間以内という上限がある(風俗営業等は不可)
- 許可を取っていない状態で働かせると、雇用企業が不法就労助長罪に問われる
在留カードの裏面に「就労不可」と記載されている場合は、資格外活動許可なしでは一切就労させてはいけない。
罰則の重さを知る
2025年6月の改正出入国管理法施行により、不法就労助長罪の罰則が強化された。
| 行為 | 改正前の罰則 | 改正後の罰則(2025年6月〜) |
|---|---|---|
| 不法就労外国人を雇用する | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 5年以下の懲役または500万円以下の罰金 |
| 法人が不法就労を行わせた場合 | 法人にも罰金刑 | 法人にも罰金刑(上限引き上げ) |
「在留カードを確認した」だけでは免責されない場合もある。「確認したが業務内容まで照合しなかった」「資格外活動許可の有無を見落とした」といった過失があれば処罰対象になりうる。
─── 第2章:就労制限なし!「永住者・定住者・日本人配偶者等」 ───
この資格を持つ人は時間も業務も制限なし
永住者(えいじゅうしゃ)、定住者(ていじゅうしゃ)、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等の4つの在留資格は、就労に一切の制限がない。
| 比較項目 | 内容 |
|---|---|
| 就労可能時間 | 制限なし(労働基準法の範囲内) |
| 就労できる業務 | 制限なし(あらゆる業種・職種) |
| 在留カード確認のポイント | 在留期限が切れていないことだけ確認すればOK |
| 雇用管理の難易度 | 最も簡単 |
就労制限がないため、採用後に「この業務はできません」「この時間はダメです」というトラブルが発生しない。アルバイト・パート・正社員・管理職・どんな業務でも自由に任せられる。
| 在留資格 | 在留期限 | 就労時間 | 就労業務 |
|---|---|---|---|
| 永住者 | 無期限(カードの有効期限はある) | 制限なし | 制限なし |
| 日本人の配偶者等 | 6ヶ月・1年・3年・5年 | 制限なし | 制限なし |
| 永住者の配偶者等 | 6ヶ月・1年・3年・5年 | 制限なし | 制限なし |
| 定住者 | 6ヶ月・1年・3年・5年 | 制限なし | 制限なし |
─── 第3章:業務範囲に制限あり!「技術・人文知識・国際業務(技人国)」 ───
技術・人文知識・国際業務(ぎじんこく)は、就労可能な時間に上限はない(労働基準法の範囲内で通常勤務できる)。ただし、従事できる業務の種類に制限がある。
| 比較項目 | 内容 |
|---|---|
| 就労可能時間 | 上限なし(フルタイム勤務・残業も可能) |
| 就労できる業務 | ホワイトカラー業務のみ(技術・人文知識・国際業務に該当する仕事) |
| 現場作業 | 原則NG(製造ライン・単純作業・肉体労働) |
| 副業・兼業 | 本業と同一区分の業務なら可能(要確認) |
就労できる業務の具体例
| 区分 | OK(就労可能) | NG(就労不可) |
|---|---|---|
| 技術 | SE、プログラマー、機械設計、建築設計 | 工場ライン作業、現場の作業員 |
| 人文知識 | 経理、法務、人事、マーケティング | 倉庫作業、レジ打ち、清掃 |
| 国際業務 | 通訳、翻訳、海外営業、貿易実務 | 単純な接客のみ(語学使用がない) |
判断のポイント:
- その外国人の専門的な知識・技術・語学力が業務に直接活かされているか?
- 日本人従業員の誰でもできる単純作業ではないか?
─── 第4章:分野限定で時間制限なし!「特定技能」 ───
特定技能(とくていぎのう)も就労時間の上限はない(フルタイム勤務・残業可能)。ただし就労できる分野が「指定書(していしょ)」に記載された分野・業務区分に限られる。
| 比較項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 就労可能時間 | 上限なし(労働基準法内) | 上限なし(労働基準法内) |
| 就労できる業務 | 指定書の分野・業務区分内のみ | 指定書の分野・業務区分内のみ |
| 時間外労働 | 36協定の締結が必要(日本人と同様) | 36協定の締結が必要(日本人と同様) |
| 副業・兼業 | 原則として難しい(指定書の業務区分外はNG) | 原則として難しい |
時間外労働のルール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 残業の可否 | 可能(36協定の締結が必要) |
| 時間外労働の上限 | 月45時間・年360時間(法定上限、特別条項なしの場合) |
| 割増賃金 | 時間外25%増し、深夜25%増し、休日35%増し |
| 日本人との差別 | 禁止(同等以上の待遇が必要) |
─── 第5章:幅広い業務が可能!「特定活動(46号)」 ───
特定活動46号(とくていかつどう46ごう)は、日本の4年制大学卒業かつ日本語能力試験N1(またはBJT480点以上)を保有する外国人に認められた在留資格だ。
| 比較項目 | 内容 |
|---|---|
| 就労可能時間 | 上限なし(フルタイム・残業可能) |
| 就労できる業務 | ホワイトカラー業務+現場作業(コンビニ・飲食・工場など幅広い業種) |
| 条件 | 「日本語を要する対人業務」が含まれること |
| 就労できる例 | 就労できない例 |
|---|---|
| コンビニで日本語接客+レジ業務 | 清掃のみ(日本語対応なし) |
| 飲食店で通訳しながらホール業務 | 食器洗いのみ |
| 工場で外国人スタッフの指導+製造ライン | 単独で製造ラインのみ(日本語業務なし) |
─── 第6章:要注意!「留学」は原則就労不可 ───
就労時間の上限
| 期間 | 就労可能時間 |
|---|---|
| 通常期(学校がある期間) | 週28時間以内 |
| 長期休業期間(夏休み・冬休みなど学則で定める期間) | 1日8時間以内(週40時間以内相当) |
週28時間は「1週間の合計」で管理する。複数のアルバイト先を掛け持ちしている場合も、合計で週28時間が上限だ。
「週28時間」の数え方のポイント
| ケース | 合計時間 | 判定 |
|---|---|---|
| A店で週20時間+B店で週8時間 | 週28時間 | ○(ちょうど上限) |
| A店で週20時間+B店で週10時間 | 週30時間 | ✗(上限オーバー) |
| 夏休み中1日10時間勤務 | 1日10時間 | ✗(長期休業中も1日8時間が上限) |
留学生が就労できない業種
| 就労できない業種 | 理由 |
|---|---|
| 風俗営業等(キャバクラ・ホストクラブ・性風俗等) | 法律で明示的に禁止 |
| パチンコ・ゲームセンター等(一部施設) | 年齢や施設種別による |
留学生アルバイトを採用する企業は、「週28時間を超えて働かせていないか」を管理する責任がある。「本人が自己申告した」では免責されない。複数のアルバイト掛け持ちがあっても、自社での勤務時間だけで管理するのではなく、本人に他の勤務時間を確認する習慣をつけることが重要だ。
─── 第7章:要注意!「家族滞在」も原則就労不可 ───
家族滞在(かぞくたいざい)は、技人国・特定技能など就労系在留資格を持つ外国人の家族(配偶者・子ども)が日本に滞在するための在留資格だ。原則就労は認められていない。
| 比較項目 | 内容 |
|---|---|
| 原則の就労可否 | 不可 |
| 資格外活動許可取得後 | 週28時間以内でアルバイト可能 |
| 就労できる業務 | 風俗営業等を除き幅広い業種でOK |
| 在留カードの確認 | 裏面「就労不可」→許可なしは絶対NG |
在留カード裏面の確認が最重要
| 裏面の記載 | 意味 | 採用可否 |
|---|---|---|
| 就労不可 | 資格外活動許可なし | 就労させてはいけない |
| 許可(資格外活動許可:週28時間以内) | 資格外活動許可あり | 週28時間以内で就労可能 |
─── 第8章:育成中!「技能実習・育成就労」の就労ルール ───
| 比較項目 | 技能実習 | 育成就労(2027年〜) |
|---|---|---|
| 就労可能時間 | 制限なし(労働基準法内)、36協定要 | 制限なし(労働基準法内)、36協定要 |
| 就労できる業務 | 実習計画に記載された特定作業のみ(最も厳格) | 16分野内の業務区分 |
| 転籍 | 原則不可 | 一定条件下で可能 |
| 副業 | 禁止 | 禁止 |
技能実習の時間外労働(残業)のルール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法定労働時間 | 1日8時間・週40時間 |
| 残業可否 | 36協定締結で可能 |
| 残業時間の上限 | 月45時間・年360時間(法定上限) |
| 割増賃金 | 時間外25%増し以上(日本人と同一基準) |
| 深夜労働(22時〜翌5時) | 25%増し以上 |
| 休日労働 | 35%増し以上 |
注意:農業・漁業分野の技能実習生は「農業労働」に関する労働時間の特例規定(変形労働時間制等)が適用される場合があり、他の分野と異なる扱いになることがある。
─── 第9章:全在留資格の就労制限まとめ大全表 ───
| 在留資格 | 就労可能時間 | 就労できる業務範囲 | 資格外活動許可 |
|---|---|---|---|
| 永住者 | 無制限 | 無制限 | 不要 |
| 日本人の配偶者等 | 無制限 | 無制限 | 不要 |
| 永住者の配偶者等 | 無制限 | 無制限 | 不要 |
| 定住者 | 無制限 | 無制限 | 不要 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 無制限(残業可) | ホワイトカラー業務のみ(現場作業NG) | 不要 |
| 特定技能1号 | 無制限(残業可) | 指定書の分野・業務区分内のみ | 不要 |
| 特定技能2号 | 無制限(残業可) | 指定書の分野・業務区分内のみ | 不要 |
| 特定活動46号 | 無制限(残業可) | 幅広い業種(日本語業務が含まれること) | 不要 |
| 介護 | 無制限(残業可) | 介護業務および関連業務 | 不要 |
| 技能実習 | 無制限(36協定要) | 実習計画に記載された特定作業のみ | 不要(副業禁止) |
| 育成就労(2027〜) | 無制限(36協定要) | 16分野内の業務区分 | 不要(副業禁止) |
| 留学 | 週28時間以内(長期休業中は1日8時間以内) | 風俗営業等を除く幅広い業種 | 必要 |
| 家族滞在 | 週28時間以内 | 風俗営業等を除く幅広い業種 | 必要 |
| 短期滞在 | 就労不可 | 就労目的での利用は禁止 | 取得不可 |
| 観光ビザ(査証免除含む) | 就労不可 | 就労目的での利用は禁止 | 取得不可 |
在留カードの見方まとめ
| 確認項目 | 確認場所 | 判断方法 |
|---|---|---|
| 在留資格の種類 | 在留カード表面 | 就労制限の有無を確認 |
| 在留期限 | 在留カード表面 | 採用時点で有効か確認 |
| 資格外活動許可の有無 | 在留カード裏面 | 「就労不可」→就労させてはいけない |
| 就労制限の内容 | 在留カード裏面 | 「週28時間以内」等の記載を確認 |
| 指定書の業務区分 | 指定書(別紙) | 特定技能・特定活動等は必ず確認 |
─── 第10章:よくある違反ケースと防止策 ───
違反ケース① 留学生の週28時間オーバー
典型的な経緯:
飲食店で週25時間勤務の留学生スタッフが、別の飲食店でも週10時間アルバイトをしていた。合計35時間で上限オーバー。採用企業は別のバイトの存在を把握していなかった。
防止策:
採用時に「他のアルバイトの有無と勤務時間」を書面で確認し、「合計週28時間を超えないこと」を雇用契約書に明記する。定期的に確認する仕組みも作っておく。
違反ケース② 家族滞在の資格外活動許可未確認
典型的な経緯:
パートタイムで採用した外国人の在留カード表面だけ確認し、在留期限は有効だったため採用。裏面の「就労不可」の記載を見落とし、6ヶ月間就労させ続けた。
防止策:
在留カードは表面と裏面の両方を確認する。コピーを取って保管することも有効だ。
違反ケース③ 技人国の人を現場作業に配置
典型的な経緯:
技人国で採用したベトナム人スタッフを「人手が足りないから」と製造ラインに配属。本人も断れず数週間現場で作業し続けた。
防止策:
採用時に「この在留資格でできる業務・できない業務」を担当者全員で共有し、現場責任者レベルまで周知する。
違反ケース④ 特定技能の人を別分野の業務に回す
典型的な経緯:
飲食料品製造業の特定技能で採用した外国人を、繁忙期に系列の外食業レストランに「応援」として派遣した。
防止策:
特定技能外国人の指定書を全員分管理し、業務変更・応援・異動の際は必ず指定書の確認と支援機関への相談を行う。
─── 第11章:採用前に確認すべきチェックリスト ───
採用選考時の在留資格確認チェックリスト
- □ 在留カードの表面を確認した(在留資格の種類・在留期限)
- □ 在留カードの裏面を確認した(就労制限・資格外活動許可の有無)
- □ 在留期限が採用日以降も有効であることを確認した
- □ 就労制限がある場合、自社の業務がその範囲内かを確認した
- □ 特定技能・特定活動の場合、指定書の内容も確認した
- □ 留学・家族滞在の場合、資格外活動許可の有無を裏面で確認した
- □ 留学生の場合、他のアルバイトの有無と勤務時間を書面で確認した
- □ 週28時間の上限がある場合、それを守れるシフト管理体制があるか確認した
- □ 在留カードのコピーを採用書類として保管した
- □ 不明な点がある場合、行政書士または入管庁に確認した
勤務中の在留資格管理チェックリスト(月次推奨)
- □ 在留期限が近い外国人スタッフのリストを確認した(3ヶ月前から更新準備)
- □ 留学・家族滞在スタッフの週勤務時間を確認した(28時間超えていないか)
- □ 留学・家族滞在スタッフが他のアルバイトと合計で28時間を超えていないか確認した
- □ 特定技能・技人国スタッフの業務内容が指定書・在留資格の範囲内かを確認した
- □ 業務内容や配属先に変更がある場合、入管庁への届出や支援機関への連絡をした
─── まとめ ───
| 大分類 | 在留資格 | 就労時間 | 業務制限 |
|---|---|---|---|
| 制限なし | 永住者・定住者・日本人配偶者等・永住者配偶者等 | 無制限 | なし |
| 業務範囲のみ制限 | 技人国・特定技能・特定活動46号・技能実習など | 無制限 | あり(分野・業種・業務区分) |
| 時間も業務も制限 | 留学・家族滞在 | 週28時間以内 | 風俗営業等は不可 |
| 就労不可 | 短期滞在・観光ビザ | 0時間 | 全業種不可 |
採用担当者が今すぐやること
| アクション | 優先度 | 理由 |
|---|---|---|
| 在留カードの裏面確認を採用ルールに組み込む | ★★★ | 見落としが最も多いポイント |
| 週28時間のシフト管理体制を整備する | ★★★ | 留学・家族滞在の違反は企業責任 |
| 現場責任者に在留資格のルールを周知する | ★★ | 現場での「気軽な業務変更」が違反になる |
| 不明なケースは行政書士に相談する | ★★ | 自己判断でのミスを防ぐ |
| 不法就労助長罪の罰則強化(2025年6月〜)を社内で共有 | ★★ | 5年以下の懲役・500万円以下の罰金 |
外国人雇用は「在留カードを確認した」だけで終わりではない。その在留資格で何時間まで・どんな業務が可能かを把握し、日々の業務管理の中で守り続けることが企業の責任だ。
この記事は2026年5月時点の情報に基づいています。不法就労助長罪の罰則強化(2025年6月施行)の詳細や在留資格の最新情報は、出入国在留管理庁の公式サイトで必ず確認してください。
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