短期滞在インターン受け入れの注意点と必要書類一覧【2026年最新版】


─── はじめに ───

「うちは無償のインターンだから、ビザなんて気にしなくていいですよね?」

ある中小企業の社長からこう聞かれたとき、正直ヒヤッとした。海外の大学生を「無償」で2ヶ月ほど受け入れるという話だったが、そのまま進めていたら危ない案件だった。無償だからといって、何の在留資格でも受け入れられるわけではない。実は無償インターンシップにも、れっきとした在留資格——「短期滞在」——が必要になる。

短期滞在インターンシップは、特定活動(告示9号)インターンシップと違って大学を通した提携が必須ではなく、比較的ハードルが低いと思われがちだ。しかし実態は逆で、近年は入管庁の審査が厳格化しており、「労働力の確保目的では」と疑われた途端に許可が下りなくなる。報酬の扱い、申請窓口、必要書類のどれも、就労ビザとはまったく別のルールで動いている。

この記事では、海外大学生を無償の短期滞在インターンとして受け入れる際の制度の仕組み、注意すべきポイント、そして実際に揃えるべき書類一覧を、初めて外国人インターンを検討する企業の採用担当者向けに整理する。


─── 第1章:そもそも「短期滞在インターン」って何か───

一言で言うと「無償・90日以内」の実習を許可する在留資格

「短期滞在(たんきたいざい)」とは、観光・商用・知人訪問などの目的で日本に一時的に滞在するための在留資格だ。本来は就労や報酬を伴う活動を目的としたものではないが、無償かつ短期間のインターンシップであれば、この在留資格の範囲内で受け入れることができる。

ポイントは次の2つだ。

1. 報酬(賃金)を一切支払わないこと(実費支給は別、後述)

2. 在留期間が90日以内であること

90日を超える無償インターンシップは理論上「文化活動」の在留資格の対象になり得るが、実務上、中長期にわたって無償で実習を行うケース自体がほとんど存在しない。そのため「90日を超える場合は事実上許可が下りにくいと考えておくのが実務上の目安」というのが専門家の間での一般的な見解だ。あくまで目安であり、個別の事情によって判断は変わるため、90日を超える計画を検討する場合は必ず事前に出入国在留管理庁または専門家(行政書士等)に確認することを強くすすめる(出入国在留管理庁「在留資格『特定活動』」)。

「特定活動インターンシップ」との違い(比較表)

外国人学生のインターンシップ受け入れには、主に「特定活動(告示9号)」と「短期滞在」の2つの枠組みがある。それぞれ別物として理解する必要がある。

比較項目短期滞在インターンシップ特定活動(告示9号)インターンシップ
報酬の有無無償(実費支給は可)有償が前提
在留期間90日以内最長1年(更新不可)
大学との教育課程の連動必須ではない(推奨)必須(単位取得等)
申請窓口学生本人の母国にある在外公館(大使館・領事館)日本の地方出入国在留管理局
受入企業の体制要件明文化された必須要件はないが審査で重視される指導体制・責任者選任が必須
査証免除国の扱い査証免除国の学生は事前のビザ取得自体が不要な場合がある在留資格認定証明書交付申請が必要

導入すると何が変わるか(before/after)

項目導入前(短期滞在の仕組みを知らない場合)導入後(正しく短期滞在で受け入れる場合)
短期の受け入れ案件「無償だから何でもいい」と誤解し違法就労リスク90日以内・無償の範囲で適正に受け入れ
申請窓口の理解日本の入管局に申請しようとして手続きが止まる学生の母国の在外公館で正しく申請
実費支給の扱い交通費を払うと「報酬」とみなされ違法と誤解交通費・住居費等の実費は支給可能と理解
審査への対応受入体制の説明が不十分で不許可リスク指導体制・実習内容を明確に説明し審査をクリア

─── 第2章:短期滞在インターンの「報酬」をめぐるルール ───

「無償」とは具体的に何を指すのか

短期滞在インターンシップの最大の前提は「報酬を一切受け取らないこと」だ。ここでいう「報酬」とは、労働の対価として支払われる賃金・給与を指す。

一方で、実費として支給するものは報酬には含まれない。

支給できるもの(実費の範囲)支給してはいけないもの(報酬とみなされるもの)
往復の航空券・交通費時給・日給・月給などの賃金
滞在中の住居費補助成果に応じたインセンティブ・ボーナス
食費の補助「お礼」「謝礼」という名目での金銭支払い

よくある誤解: 「実費として1日3,000円のお小遣いを渡す」といった曖昧な支給方法は、入管庁から見ると労働の対価(報酬)と判断されるリスクがある。実費は「航空券代として実際に支払った金額」「住居費として契約書に基づく金額」など、根拠が明確なものに限定するのが安全だ(※これは概算表示例です。実際は受け入れ内容により変動します)。

なぜ無償インターンの審査が厳しくなっているのか

近年、十分な指導体制がないまま多数のインターンシップ生を受け入れる事例や、インターンシップを実質的な労働力確保の手段として利用する事例が一部の受入機関で確認されており、入管庁はこれを問題視している。実質的に労働とみなされる内容のインターンシップは、原則として許可されない。

実務でこう使える: 短期滞在インターンを企画する際は、「学生が何を体験し、何を学ぶのか」を明確にした実習スケジュールを作成しておく。たとえば「1日のうち実習は4時間まで、残りは見学・レポート作成」のように、労働密度を抑えた設計にすることで「労働力としての利用」という疑いを避けやすくなる。


─── 第3章:申請窓口は「日本の入管局」ではない ───

短期滞在ビザは在外公館で申請する

特定活動インターンシップとの最大の違いの一つが、申請窓口だ。短期滞在ビザは、学生本人の国籍がある国・地域にある日本の在外公館(大使館・総領事館・領事事務所)で申請する。日本国内の出入国在留管理局には申請しない。

申請の種類申請窓口申請者
短期滞在ビザ(査証)学生の母国にある日本大使館・総領事館学生本人(または代理人)
特定活動インターンシップ(参考)受入企業を管轄する地方出入国在留管理局受入企業(取次者)

査証免除国の学生は手続きが異なる場合がある

日本と査証免除措置を結んでいる国・地域の国籍を持つ学生の場合、短期滞在目的であれば事前にビザを取得しなくても入国できる場合がある。ただし、入国時に「インターンシップ目的である」ことを入国審査官に説明できる資料(招聘理由書・実習計画書等)を携帯しておくことが望ましい。査証免除の対象国・地域は変更されることがあるため、申請準備を始める都度、外務省サイトで最新の対象国一覧を確認する習慣をつけておくと安心だ。

実務上の注意: 査証免除国だからといって書類の準備を省略してよいわけではない。入国審査の場で説明資料を求められた際に提示できないと、入国を拒否されるリスクがある。


─── 第4章:必要書類一覧 ───

招聘する企業(受入企業)側が準備する書類

短期滞在ビザの申請では、招聘する側(受入企業)が用意する書類と、申請人(学生本人)が用意する書類の両方が必要になる。

区分書類名内容
招聘理由書インターンシップ受け入れ理由書受け入れの目的・期間・実習内容を説明する文書
招聘経緯書招へい経緯書学生と企業がどのような経緯で接点を持ったかを説明する文書
申請人名簿複数名受け入れる場合に作成受け入れる学生全員の氏名・国籍等を記載
滞在予定表日程表来日から帰国までの滞在スケジュール
身元保証書受入企業の代表者等が作成滞在費用の支弁・帰国旅費の保証等を誓約
会社・団体概要説明書会社案内等受入企業の事業内容・規模を説明する資料
課税証明書・確定申告書の写し受入企業(または代表者)が税務署・市区町村窓口で取得する納税状況の証明資料招聘者の経済的信用力を示す

申請人(学生本人)側が準備する書類

区分書類名内容
査証申請書在外公館所定のフォーム基本情報・渡航目的を記入
旅券(パスポート)有効なパスポート原本在外公館への提示が必要
写真規定サイズの証明写真在外公館の指定サイズに準拠
在学証明書学生が在籍する大学が発行学生であることを証明
実習計画書受入企業と共同で作成実習内容・スケジュール・指導体制を記載
預金残高証明書学生本人または保証人名義滞在費用を支弁できることを示す
戸籍謄本・住民票(必要に応じて)国籍・身分関係を示す資料在外公館の求めに応じて準備

実務でこう使える: 招聘理由書・実習計画書は、受入企業の人事担当者が下書きを作成し、学生側と日程を確認しながら仕上げると、内容の整合性が取れてスムーズに進む。記載内容が企業側と学生側で食い違っていると、在外公館から追加説明を求められることがある。


─── 第5章:審査でよくある不許可・差し戻しのケース ───

ケース1:実習内容が「労働」と判断された

状況: 倉庫内での仕分け作業を1日8時間、休憩1時間のみで2ヶ月間担当させる計画を申請したところ、「実質的な労働」とみなされ許可が下りなかった。

対処法: 実習時間を短縮し、見学・レポート作成・座学などを組み合わせた計画に変更する。「学ぶ時間」と「作業時間」のバランスを明確に示すことが重要。

ケース2:実費支給の名目が不明確だった

状況: 「生活費として現金を渡す」と申請書に記載したところ、報酬とみなされる可能性があるとして追加説明を求められた。

対処法: 「住居費として契約済みのアパート代を企業が直接支払う」「航空券は企業が事前に購入して提供する」など、現金の直接支給ではなく、実費の対象を明確にした形で記載する。

ケース3:受入企業の説明が「形式的」だった

状況: 招聘理由書の内容が簡素で、なぜこの学生を受け入れるのか、どのような体制で指導するのかが不明確だった。

対処法: 受け入れの経緯(大学からの紹介、過去の交流実績等)、指導担当者の氏名・役割、実習の目的を具体的に記載する。テンプレートをそのまま使うのではなく、個別の実情に合わせて作成する。


─── 第6章:受入企業が気をつけたい体制面のポイント ───

「無償だから何でもいい」ではない

短期滞在インターンシップには、特定活動インターンシップのような明文化された体制要件(指導体制・責任者選任の義務化等)はない。しかし、審査の現場では実質的に同様の観点——指導体制が整っているか、実習内容に教育的な意義があるか——が見られている。

チェック項目確認内容
指導担当者の明確化誰が学生を指導するのかを決めているか
実習スケジュールの妥当性労働密度が高すぎないか(見学・座学を含めているか)
受け入れ人数の適正さ指導体制に対して人数が多すぎないか
実費支給の根拠の明確さ何のための支給かが書面で説明できるか

実務でこう使える: 複数名を同時に受け入れる場合は、1人の指導担当者がどこまで対応できるかを事前に検討する。指導が「形だけ」になっていると、審査だけでなく実習自体の質も下がってしまう。


─── 第7章:今日から始める準備チェックリスト ───

受け入れ検討段階

  • [ ] インターンシップが無償か有償かを明確に決めたか
  • [ ] 在留期間が90日以内に収まる計画になっているか
  • [ ] 実費として支給する範囲(交通費・住居費等)を決めたか

書類準備段階

  • [ ] 招聘理由書・招へい経緯書を作成したか
  • [ ] 実習計画書を学生側と共同で作成したか
  • [ ] 受入企業の会社概要・納税関連資料を準備したか
  • [ ] 申請窓口が学生の母国にある在外公館であることを確認したか

申請・受け入れ段階

  • [ ] 査証免除国の場合でも説明資料を携帯するよう学生に伝えたか
  • [ ] 指導担当者を決め、実習スケジュールに見学・座学を含めたか
  • [ ] 受け入れ人数に対して指導体制が十分かを確認したか

─── まとめ ───

短期滞在インターンシップは、特定活動(告示9号)インターンシップと比べて手続きが軽そうに見えるが、実際には「無償であること」「90日以内であること」という制約の中で、報酬の扱いや実習内容の妥当性が厳しく見られる制度だ。申請窓口が日本の入管局ではなく学生の母国の在外公館である点も、特定活動インターンシップとは大きく異なる。

今日から始められること:

  • 検討中のインターンシップが無償・90日以内の条件に収まっているか確認してみる
  • 実費支給の範囲を「航空券・住居費・食費」など根拠が明確なものに整理してみる
  • 招聘理由書・実習計画書の下書きを作成してみる

無償だからといって手続きが不要になるわけではない。正しい在留資格の枠組みを理解し、必要書類を一つずつ揃えていくことが、トラブルのない受け入れの第一歩になる。


参考情報源:

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