─── はじめに ───
「インターンシップって、特定技能や技人国に比べて費用がかからないんですよね?」——前回のコスト比較記事を読んだ企業の担当者からよく聞かれる質問だ。確かに、3制度を比較すると外国人インターンシップの費用は最も軽い。だが「費用がかからない」と「費用がゼロ」はまったく違う。実際に見積もりを取ってみると、「行政書士費用」「査証申請料」「保険」「住居支援」など、個別には少額でも積み重なると意外な金額になる項目がいくつも出てくる。
しかも、インターンシップは特定技能や技人国と違って業界全体の相場データが整備されていない。「だいたいこれくらい」という横並びの目安が少ないため、見積もりを取る前に自社で「何にお金がかかるのか」を把握していないと、仲介会社や行政書士から提示された金額が高いのか妥当なのか判断できない。
この記事では、外国人インターン採用(特定活動インターンシップ・短期滞在インターンシップの両方)で実際に発生する費用を項目別に整理し、それぞれについて節約できる可能性のあるポイントを具体的に解説する。すでにインターン受け入れを検討している企業の予算策定や、仲介会社との交渉材料として活用してほしい。
─── 第1章:そもそもインターンシップ採用の費用構造はどうなっているか ───
一言で言うと
外国人インターンシップ(特定活動・告示9号、または短期滞在)は、海外の大学に在籍する学生を教育目的で一定期間受け入れる制度だ。特定技能や技人国のような「正社員としての継続雇用」を前提にしていないため、費用の発生パターンも大きく異なる。
| 比較軸 | 特定技能・技人国 | インターンシップ |
|---|---|---|
| 雇用形態 | 正社員としての継続雇用 | 教育目的の一定期間の実習 |
| 紹介料の有無 | 多くのケースで発生(定額制または%ベース) | 制度上必須ではなく、ルートにより0円も可能 |
| 継続費用(2年目以降) | 特定技能は登録支援機関費が継続発生 | 基本的に1回限りの実習で継続費用は発生しない |
| 費用の相場データ | 業界団体・調査会社の調査データが複数存在 | 確立された相場データが少ない |
費用を把握しているかどうかで変わること(before/after)
| 視点 | 費用を把握していない場合 | 費用を把握している場合 |
|---|---|---|
| 仲介会社との交渉 | 提示金額をそのまま受け入れてしまう | 「この項目は不要では」と交渉できる |
| 予算策定 | 行政書士費用や保険を見落とし、後から追加発生 | 全項目を事前にリストアップして見積もれる |
| 受け入れルート選択 | 仲介会社経由が当然だと思い込む | 大学経由・JASSO協定経由など費用の低いルートを検討できる |
─── 第2章:インターンシップ採用でかかる費用の全項目 ───
インターンシップ採用で発生しうる費用を、発生タイミング別に整理すると以下のようになる。
| 項目 | 金額目安 | 発生タイミング |
|---|---|---|
| 在留資格変更許可申請(国内) | 6,000円(窓口)/5,500円(オンライン) | 申請時(国内在住者を変更する場合) |
| COE交付申請(海外から) | 無料 | 申請時(海外から呼び寄せる場合) |
| 短期滞在ビザ査証申請料 | 要確認(対象国により異なる) | 短期滞在インターンシップ利用時 |
| 仲介・コーディネート費用 | 要確認(特定技能の紹介料20万~80万円は別制度の参考値であり、そのまま適用できる金額ではない) | 仲介会社経由の場合 |
| 行政書士・申請代行費用 | 3万~15万円程度(事例ベース) | 申請時 |
| 日本語教育・研修費用 | 要確認(実習内容により個別見積もり) | 受け入れ準備〜実習中 |
| 住居支援コスト | 要確認(企業の任意負担) | 来日前〜実習期間中 |
| 保険(海外旅行保険等) | 要確認 | 実習期間中(特に短期滞在の場合) |
| 通訳・多言語資料作成費 | 要確認 | オリエンテーション準備時 |
「要確認」となっている項目が多いのは事実だが、これは「確認すれば金額が判明する」項目でもある。次章以降で、それぞれの項目を個別に深掘りする。
─── 第3章:行政手数料・査証関連費用 ───
在留資格変更許可申請料
国内に既にいる留学生等を特定活動(告示9号)インターンシップに在留資格変更する場合、変更許可申請料は2025年4月の手数料改定後で窓口申請6,000円・オンライン申請5,500円となっている。海外から新規に呼び寄せる場合のCOE(在留資格認定証明書)交付申請自体は無料だ。
短期滞在ビザの査証申請料
短期滞在インターンシップを利用する場合、査証(ビザ)申請料が別途発生する可能性がある。これは学生の国籍によって免除される場合とそうでない場合があり、一律の金額を提示することは難しい。受け入れ予定の学生の国籍が決まった段階で、当該国を管轄する日本大使館・総領事館の公式サイトに掲載されている査証申請料を個別に確認する必要がある。
節約ポイント: 査証免除対象国の学生であれば、この費用自体がゼロになる。受け入れ候補が複数いる場合、査証免除国出身の学生を優先することで行政コストを抑えられる可能性がある(ただし、選考は教育目的・実習内容の適合性を優先すべきであり、コストだけで判断すべきではない)。
─── 第4章:仲介・コーディネート費用 ───
仲介会社を使う場合と使わない場合の違い
インターンシップ専用の仲介費用について、業界全体で確立された相場データは現時点では見当たらない。ただし、受け入れルートによって費用構造が大きく異なる点は明確だ。
| 受け入れルート | 仲介費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 民間仲介会社経由 | 要確認(インターンシップ専用の確立された相場データはなく、特定技能の紹介料20万~80万円は異なる制度の参考値に過ぎない) | 候補者の選定・書類準備・受け入れ後のサポートまで一貫対応 |
| 大学間協定経由 | 0円(仲介費用なし) | 提携大学の留学センター等が窓口となり、仲介会社を介さない |
| JASSO協定インターンシップ経由 | 0円(仲介費用なし) | 日本学生支援機構(JASSO)の協定プログラムを利用 |
| 自社での直接募集 | 0円(仲介費用なし、ただし募集活動自体に人的コストがかかる) | 海外大学とのリレーション構築が前提 |
すでに大学とのパイプラインがある業界(理系学部との産学連携が進んでいる業界等)であれば、仲介会社を使わずに大学窓口と直接やり取りすることで仲介費用をゼロに抑えられる可能性がある。一方で、初めて外国人インターンを受け入れる企業にとっては、候補者選定や在留資格申請のノウハウがない状態で全てを自社対応するのは負担が大きく、最初の1〜2回は仲介会社を利用して実務を学ぶという判断も合理的だ。
─── 第5章:行政書士・申請代行費用 ───
代行費用の相場
在留資格変更・認定申請の代行を行政書士に依頼する場合、就労ビザの代行費用が9万9,000円程度からという例や、追加で1名分のインターン申請を行う際に3万円程度が加算される例が見られる。複数名を同時に申請する場合は、2人目以降の費用が割安になることもある。
自社対応 vs 行政書士代行の比較
| 項目 | 自社で申請書類を作成 | 行政書士に代行依頼 |
|---|---|---|
| 費用 | 0円(社内人件費は別途発生) | 3万~15万円程度(事例ベース) |
| 申請書類の正確性 | 担当者の経験により変動 | 専門家のチェックが入るため不備が少ない |
| 対応スピード | 社内のリソース状況に依存 | 行政書士のスケジュールに依存するが経験上スムーズ |
| 初めての受け入れ企業への適性 | 不慣れな場合はリスクが高い | 初回は代行依頼が安全 |
─── 第6章:日本語教育・研修費用 ───
インターンシップに特化した費用データの現状
日本語教育・研修費用について、インターンシップに特化した費用データは確認できなかった(要確認)。特定技能や技人国と違い、インターンシップの実習内容は企業ごとに大きく異なり、研修内容も実習計画書に応じて個別設計される点が、相場データが整備されにくい理由の一つと推測される。
節約しつつ教育的意義を保つ工夫
| 工夫 | 内容 | コストへの影響 |
|---|---|---|
| 既存の社内研修資料の多言語化 | 新規の研修を作るのではなく、既存資料を英語等に翻訳して活用 | 翻訳費用のみで研修自体の新規開発費を抑えられる |
| 大学側の事前研修との連携 | 大学が事前に実施するオリエンテーションの内容を確認し、重複する研修を省く | 重複コストの削減 |
| 社内の英語対応可能な社員をメンターに起用 | 外部講師を呼ばず、社内人材で対応 | 外部講師費用が不要になる |
研修費用をゼロにすることが目的化してしまうと、教育的意義の薄い実習になりかねない。コスト削減は「不要な重複や外部費用を削る」方向で行い、学生にとっての学びの質は落とさないことを優先すべきだ。
─── 第7章:住居支援・保険費用 ───
住居支援は任意だが検討の価値がある
インターンシップにおける住居支援は企業の任意負担となるケースが多く、具体的な相場データは要確認だが、交通費・昼食代などの日常的な費用は学生本人の負担とされる例も見られる。住居支援自体を行わない企業も少なくない。
保険:短期滞在インターンの落とし穴
短期滞在インターンの場合、大学の学生保険の対象外となるケースがあるため、海外旅行保険等への加入が推奨されている。これは「節約すべき項目」ではなく、「節約してはいけない項目」だ。実習中の事故・病気に対する保険が未加入のまま受け入れてしまうと、トラブル発生時に企業側が想定外の負担を抱えるリスクがある。
| 項目 | 節約してよいか | 理由 |
|---|---|---|
| 住居支援 | 状況により節約可(任意の支援) | 法令上の義務ではなく、学生本人が自己手配する選択肢もある |
| 保険 | 節約は推奨しない | 未加入時のトラブル対応コストが保険料を大幅に上回るリスクがある |
─── 第8章:節約ポイントまとめ(一覧表) ───
これまで解説してきた節約ポイントを一覧化する。
| 項目 | 節約のヒント | 注意点 |
|---|---|---|
| 査証申請料 | 査証免除国出身の学生を選考候補に含める | コストだけで選考基準を決めるべきではない |
| 仲介費用 | 大学間協定・JASSO協定経由を検討する | 自社にノウハウがない場合は初回は仲介会社利用も合理的 |
| 仲介費用(複数年) | 2年目以降は直接窓口とのやり取りに切り替える | 仲介会社との契約条件(独占紹介等)を確認する |
| 行政書士費用 | 初回は代行依頼し、ひな形を流用して自社対応に切り替える | 申請書類の不備リスクは自己責任になる |
| 研修費用 | 既存資料の多言語化・大学側研修との重複排除 | 教育的意義を薄めない範囲で行う |
| 住居支援 | 住居情報リストの提供のみで自己手配を促す | 完全に任意のため強制はできない |
| 保険 | 節約しない | 未加入リスクの方が高コストになりうる |
─── 第9章:費用見積もりで陥りやすい落とし穴 ───
落とし穴1:「インターンシップは安い」という思い込みで個別見積もりを取らない
状況: 特定技能や技人国に比べて費用が軽いという情報だけを見て、具体的な見積もりを取らずに予算を確保してしまい、実際の合計額とズレが生じた。
対処法: 本記事の第2章の費用項目リストを使い、自社のケースに当てはめて「要確認」となっている項目を1つずつ仲介会社・行政書士・保険会社に確認する。
落とし穴2:保険費用を節約対象にしてしまう
状況: 費用を抑えたい一心で保険加入を見送った結果、実習中に学生が病気になり、想定外の医療費対応に追われた。
対処法: 保険は「節約してよい項目」ではなく「必須のリスク管理コスト」として予算に組み込む。
落とし穴3:仲介会社との契約内容を確認せず直接窓口への切り替えを試みる
状況: 2年目から仲介費用を節約しようと大学に直接連絡したところ、仲介会社との契約に独占紹介条項があり、トラブルになった。
対処法: 仲介会社との契約締結時に、将来的な直接窓口への切り替えの可否について事前に確認・交渉しておく。
─── 第10章:今日から始める費用確認チェックリスト ───
| 確認項目 | チェック |
|---|---|
| [ ] 受け入れ予定学生の国籍の査証免除有無を確認したか | |
| [ ] 仲介会社経由・大学協定経由・JASSO協定経由のどれを使うか検討したか | |
| [ ] 行政書士に代行依頼するか自社対応するかを決めたか | |
| [ ] 研修内容と既存社内資料の重複を確認したか | |
| [ ] 住居支援を行うかどうか、行う場合の予算を決めたか | |
| [ ] 保険加入を必須項目として予算に組み込んだか | |
| [ ] 仲介会社との契約に独占紹介条項等がないか確認したか |
─── まとめ ───
外国人インターン採用は、特定技能や技人国に比べて費用構造は軽いものの、「費用がかからない」わけではない。査証申請料、仲介費用、行政書士費用、研修費用、住居支援、保険といった項目を個別に確認し、節約できる部分と節約すべきでない部分(特に保険)を見極めることが、コストを抑えつつ質の高い受け入れを実現する鍵になる。
今日から始められること:
- 受け入れ予定のインターンシップについて、本記事の第2章の費用項目リストを使って自社のケースに当てはめてみる
- 仲介会社・大学協定・JASSO協定のどのルートが自社に合うか比較検討してみる
- 保険加入を予算の必須項目として明確に位置づける
費用の内訳を正確に把握しておくことが、インターンシップ受け入れを継続的かつ計画的に進めるための第一歩になる。
参考情報源:
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